ちいさな冬のものがたり 感想

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本日はハラグチリサさんご出演

 

ちいさな冬のものがたり

 

を拝見してきました。

 

今回は2作品同時公演であり、ハラグチさんは

「孤独な夜にさよなら」

と言う作品のご出演でした。

 

もう一つは

「鈴の音が聞こえる」

と言う作品でした。

先にこちらの感想をお話ししましょう。

 

今回はしっとり系のロマンスとドタバタコメディの2部作で「鈴の音が聞こえる」はバタバタコメディの方でした。

クリスマスイブに残業してしまうという社会人的には悲しいけど、あるよね!!と言う話なのですが、初めはせっかくだからパーティーでもしようと言う雰囲気で盛り上がっていたのですが、恋バナから不穏な雰囲気に発展していき...な感じです。

 

本日で千秋楽であったためネタバレしますと、何人もと付き合っていた男とそれに振り回される人々の話でした。話せば話すほどひどいことが起こっていく雪玉式のガッカリ話!!初めは勝ち組と負け組に分かれていたと思いきやみんな負け組だったね!残念!!な展開!!クリスマスの白い雪を鮮血で染めてやるなオチ!!そして、少しだけ奇跡が起きるラスト。いわゆる、クリスマスは恋人たちの夜だよね。を面白おかしく、けど、少し希望があるような終わらせ方をしていて、見ていてずっと笑えますし、胸がスッキリする話でした。最後の方で何股もしていた男を襲撃しにいくくだりがあるのですが、本当に鬼気迫る感じでした笑。やっぱり恋人は大事にしないとダメですね。一途に生きよう。

 

さて、もう一つは

「孤独な夜にさよなら」

という、しっとり系のロマンス作品。出版社で働く柴崎という女性の隣に泉という女性が引っ越してきたことによることから始まる少し切ないけど希望が持てるお話しです。

自分はこの話で大切なことは「らしく生きる」ということではないかと思いました。この話は先ほど紹介したハラグチリサさん演じる間宮泉というトランスジェンダーをかかえた女性と、佐伯文吾というスランプ中の小説家の二人が話の軸になります。泉はより自分らしく生きるとはなんなのか、文吾は自分が描きたいものはなんなのか、その葛藤を描いた作品でないかと思いました。自分らしく生きるということはとても難しいことです。しかしながら、きっかけになる人物というのはどこかで出会う運命にあるのでしょう。今回は泉にとっては柴崎が、文吾にとっては泉がその人物であってと思います。

自分の性別に苦悩しながら生きる泉。ありのままを受け入れてくれる場所を探し求めていたのだと思います。一番初めにその苦悩を解いてくれたのは文吾でした。引きこもってばかりいた泉に誰かが迎え入れてくれることを気付かせた文吾、その文吾に恩返しをしようとした泉、彼女は文吾の道を開くため、一人、研鑽を積み、彼を支えていきます。その気持ちは恋でしたが、それを悟られることは文吾にはありませんでした。一人で孤独でいたはずの泉と出会った柴崎。初めは偶然の出会いでしたが、自分を自分らしく受け入れてくれた柴崎に泉は心を開いていったのでしょう。しかしながら、実は泉は文吾に作品を提供していたということが発覚してしまい、そこから関係は急激に変化していきます。それまでは文吾に孤独を捧げていた泉。しかし、文吾は事件をきっかけに本当の自分がやりたかったことを自覚し、泉とは関係を断ち切ります。関係を断ち切るのは泉に選択でしたが、それは初恋が終わりを告げてしまうことを示していました。彼女は自分が孤独であったことを柴崎に打ち明けます。柴崎はそれを受け入れ、許容し、包み込みます。最後は、泉は柴崎という己を受け入れてくれる人間を見つけ、心を開け放ち生きていくことを選択したように感じました。ちなみに間宮 泉を演じてくださったハラグチリサさんですが今回の舞台の中では女性らいい面と男性らしい面が急にふっ出てくる感じがとても泉らしかったです。文吾に見せる少し少女らしい顔、柴崎に最後に見せた男性らしい顔。それぞれが間宮 泉という存在から発せられるものであり、それこそが彼女なのだと思いました。その使い分けや声色の演じ分けをしていらっしゃってかっこいいなと思いました。

 

「らしく生きる」ということが前よりは受け入れてくれている時代だとは思います。しかしながら、それは社会の表側だけで、深い部分ではまだ問題は多く残っているのでしょう。ですが、受け入れてくれる場所というのは間違いなく存在するのではないか、今回の舞台からはそんなことを感じました。きっと、大丈夫になる日が来る。そんな日がこの世界に生きる人に訪れることを願います。

 

では、また。